日々の出来事
生きる力と家族の力
スタートしてからこれまで10名の方をお看取りさせていただきました。
ご自宅で過ごすことを選択され、中には最期は病院に行かれる方もいらっしゃいます。そんな方々の人生の終焉に関わらせていただき、感じることは「生きる力」と「家族の力」の大きさということです。
動く事、歩くことはもう厳しいのではないかと思われても、「今日も、トイレに行けた・・・」と言い日々限界を更新していく。1日1日変化していくご自分の体力と向き合いながら、動かれる姿に「生きる力」を見せつけられます。「どこにそんな体力が・・どうやって?」とはじめは驚いていました。病院では体力がなくなり、筋力の低下を認めると、「転倒リスクが高い」ということで、安全を優先するがために行動を制限してしまいがちです。動ける力に危険だからと早めに制限してしまい、なかなかその力を目の当たりにすることはありません。でもその動きたい、歩きたい、トイレに行きたい思いが限界を更新するほどの動く力に替わる。これは人間が本来持っている最期を生き抜く力であり、今まで制限させてしまっていたために目の当たりにしていなかっただけなのでは?と気づいたのです。しかし、それは「家族の力」なしにはできないことでもあります。「本人の希望を支える」そんな理想的な場面ばかりではありませんが、なんだかんだ言いながらもとことん付き合っていく「家族の力」があってこそなのです。
最初は在宅での看病、介護の不安や戸惑いを口にされいても、時間の経過とお話を重ねていくうちに、いつしか家族の覚悟が決まる瞬間があります。訪問看護は1日24時間のうちのほんの数時間の係わりです。時には1週間のうちの数時間になることも。「どうすればよい?」「困っている」そんな声に耳を傾けながらアドバイスをお伝えし「いつでも連絡してください!」と全面的なバックアップと、後方支援を伝えるだけで、自然と家族の力を発揮されるのです。本当に頭が下がります。
お看取り後1か月を経過したところで、お悔みに伺うと、皆さん口をそろえて「家で看取れてよかった。」「良い時間を過ごすことができた。」「やり切った」とお話されます。
そんな皆さんの人生の最終章に関わらせていただいている事、日々たくさんの気づきと教えをいただいていることに心より感謝いたします。